アーカンソー州リトルロック：フレンドリーな南部の都市

最初に訪れたのは、クリントン大統領図書館＆博物館（William J. Clinton Presidential Library and Museum）のあるクリントン・プレジデンシャル・センター＆パーク（Clinton Presidential Center & Park）。クリントン元大統領は、政治家としてのキャリアのほとんどをリトルロックで過ごしました。アーカンソー州に「クリントン」の名を冠する場所が数多く存在するのはそのためです。例えば、アーカンソー大学（University of Arkansas）のクリントン公共サービススクール（Clinton School of Public Service）は、公共サービスの修士課程を提供する教育機関としてアメリカで初めて設立されました。クリントン大統領図書館の隣には、かつてロック・アイランド・レイルロード・ブリッジ（Rock Island Railroad Bridge）と呼ばれていた歴史ある橋、クリントン・プレジデンシャル・パーク・ブリッジ（Clinton Presidential Park Bridge）もあります。リトルロックとノース・リトル・ロックを結ぶ全長約 27 キロメートルのアーカンソー・リバー・トレイル（Arkansas River Trail）には、歩行者と自転車のための橋が数本設置されています。1899 年に建造された旧ロック・アイランド・レイルロード・ブリッジは、改修を経て、この周遊トレイルの最東部をつなぐ橋となり、この時の改修費用の一部が、クリントン財団の寄付によって賄われました。クリントン図書館には、彼が任期中に関与した公務に関する公文書も保管されています。

この博物館の展示の中で私が一番好きなのは、クリントン大統領時代の大統領執務室（Oval Office）を再現した実物大のレプリカです。彼の机の上には、父の日に娘のチェルシーから贈られた「DAD」のスペルをかたどった粘土のレプリカも飾られています。センターの随所に、クリントン元大統領の私生活と政治家としての生活を記録した資料が展示されており、1 つの時代を作り上げた大統領のさまざまな面について知ることができます。

リトルロック・セントラル・ハイスクール国定史跡（Little Rock Central High School National Historic Site）までは、車でわずか 10 分。それまで白人学生のみが通っていた高校に 9 名のアフリカ系アメリカ人が転入した場所であることから史跡に指定され、この勇気ある学生たちは、「リトルロックの 9 人」（Little Rock Nine）と呼ばれました。彼らが転入する 3 年前の 1954 年、合衆国最高裁判所ではブラウン対教育委員会の裁判が行われ、黒人と白人の学生が通う学校を分離するのは違憲であり、本質的に不平等であるという判決が言い渡されていました。 この史跡はアメリカで唯一、現在も使用されている学校の敷地内にあります。

1927 年に建てられ、アメリカ建築家協会が「アメリカで最も美しい高校」と称するセントラルハイスクール。構内を歩きながら、60 年以上前に起きた騒動を想像するのは今や至難の業です。アメリカで最も重要な公民権関連の史跡の 1 つであるセントラルハイスクールでは、よりよい教育を求めて立ち上がった公民権運動の先駆者たちの苦労を偲び、そこに残された彼らの功績を自分の目で確かめることができます。国立公園局（National Park Service）では無料のガイドツアーも実施。「リトルロックの 9 人」とここで起きた事件についてわかりやすく解説してくれます。 リトルロックにはこの他にもアフリカ系アメリカ人の歴史と公民権運動に関する見どころがあります。興味が湧いた方はぜひ訪ねてみてください。 

リトルロック滞在中に、エンターテインメント地区のリバーマーケット（River Market）と、メイン・ストリート・フード・トラック・フェスティバル（Main Street Food Truck Festival）中に現れるメイン・ストリート・クリエイティブ・コリドー（Main Street Creative Corridor）の両方を散策できたのは幸運でした。昨年 5 万人以上が来場したというフード・トラック・フェスティバルは、この時も大賑わい。地元と海外の食べ物はもちろん、甘味と塩気が絶妙なハーモニーを奏でるワッフルバーベキューサンドイッチといったクリエイティブな料理もありました。ロスト・フォーティ・ブリューイング（Lost Forty Brewing）をはじめとする地元の醸造所のテントにもぜひ立ち寄ってみたいもの。ロストフォーティのテントで私が試飲した軽い口当たりのラブ・ハニー・ボック（Love Honey Bock）は、蜂蜜のかすかな甘味が印象的でした。食に関係するフェスティバルや魅力的なレストランが豊富なこの都市は、活気溢れるフード＆ビバレッジシーンで知られています。私はクリエイティブ・コリドーの常設レストランの 1 つ、スリー・フォールド・ヌードルス＆ダンプリング・カンパニー（Three Fold Noodles & Dumpling Co.）にも立ち寄り、本格的な味わい深い料理に舌鼓を打ちました。最後にダウンタウンのリバーフロントパークへ。アーカンソー川沿いに位置する約 13 ヘクタールの美しい公園は、時間をかけて観光する価値が十分にあります。 パーク内には、この都市の名前の由来となった「ラ・プティ・ロシュ（La Petite Roche）」や、アーカンソー・リバー・トレイル、ヴォーゲルシュワルツ彫刻庭園（Vogel Schwartz Sculpture Garden）などの見どころがあります。ヴォーゲルシュワルツ彫刻庭園のテラスや歩道に設置されたユニークな彫刻をゆっくりと見て回りましょう。美しい景色が望めるリバーフロントパークのアーカンソー川沿いを散歩するのもお忘れなく。

私が今回の旅を締めくくる場所として選んだのはピナクルマウンテン州立公園（Pinnacle Mountain State Park）。ダウンタウンからわずか 30 分の場所にあり、数本のトレイルが整備されています。ハイキングやサイクリングを楽しめるほか、州立公園内にあるアーカンソー樹木園（Arkansas Arboretum）も散策できます。 山登りが好きな私は、最高の景色を見たいと思い、アーカンソー・リバー・バレー（Arkansas River Valley）の上にそびえるピナクル・マウンテン・クライム（Pinnacle Mountain Climb）にトライすることにしました。頂上を意味する「ピナクル」の名を持つこのトレイルは全長 1 km 強、登り口から頂上までの標高差は 300 m あります。頂上に近づくにつれ、トレイルは大きな石だらけとなり、他ではあまり体験できない難易度の高いハイキングになりました。しかし、頑張った甲斐は十分にありました。頂上からはマウメル湖（Lake Maumelle）とアーカンソー川の絶景だけでなく、美しい地平線が広がる 360 度のパノラマを堪能することができました。

リトルロックを訪れ、活気溢れるダウンタウンや、豊かな歴史と文化を満喫してみませんか。 州の中央に位置するリトルロックは、美しい場所でリーズナブルな休暇を過ごしたい方にぴったりです。フレンドリーな地元の人々、見どころやアクティビティに恵まれたこの都市が人気を集めるのもうなずけます。 ぜひご自分の目で確かめに来てください。